歯周病治療、スケーリングから歯ぐきの手術まで段階別に解説

歯周病治療、どこまでがスケーリングで、どこからが手術なのでしょうか
先週、診療室に50代後半の患者さまが他院の診断書を持って来院されました。「歯ぐきの手術が必要です」と案内され、大きなショックを受けられたそうです。最初のご質問はこうでした。「院長先生、スケーリングだけではだめですか?本当に手術まで必要なのでしょうか?」結論から申し上げますと、その答えは歯周病の進行度によって異なります。すべての方に手術が必要なわけではありませんし、すべての方がスケーリングだけで終わるわけでもありません。診療室でよく直面する判断です。
まず結論を整理してから始めます。第一に、歯周病治療は4段階に分かれ、各段階で処置はまったく異なります。第二に、患者さまが「歯ぐきの手術」と聞いて怖く感じられる処置の多くは、歯ぐきを切るのではなく、歯ぐきの内側をきれいに清掃することです。第三に、どの段階であっても患者さまご自身の生涯にわたるケアが欠けると結果は維持できません。
歯周病治療: 歯ぐきと歯槽骨に進行した炎症を止め、これ以上骨が溶けないようにする治療です。歯周病の段階に応じて、スケーリング、歯ぐきの深部清掃(ルートプレーニング)、歯ぐきの手術、歯周組織再生療法へと段階が上がります.
歯周病治療、なぜ医師によって勧める内容が違うのですか?
最も多いご質問ですので、結論からお答えします。
同じ歯周病でも進行段階によって処置がまったく異なるからです。歯周病は歯槽骨がどの程度吸収されているかで4段階に分かれ、段階ごとに答えが違います。
| 段階 歯槽骨の損失 患者さまが感じるサイン 推奨治療 | |||
| 1段階 歯肉炎 | なし | 歯みがき時の出血、歯ぐきの腫れ | スケーリング+口腔衛生指導 |
| 2段階 初期の歯周炎 | 歯根の15%以下 | 歯ぐきの退縮が始まる、しみる感じ | スケーリング+歯ぐき深部の清掃 |
| 3段階 中等度の歯周炎 | 歯根の15~33% | 食べ物が挟まる、口臭 | 歯ぐき深部の清掃+一部で歯ぐきの手術 |
| 4段階 重度の歯周炎 | 歯根の33%以上 | 歯の動揺、自発的出血 | 歯ぐきの手術、歯周組織再生療法、一部は抜歯 |
広く広まった考えを一つ正しておきます。「歯周病はスケーリングさえ受ければすべて解決する」という考えは、半分だけ正解です。 1段階の歯肉炎はスケーリングと歯みがきだけで完全に回復しますが、2段階以上に進むと歯ぐきの内側深くの細菌まで届かせる必要があり、一般的なスケーリングだけでは不十分です。かといって、全員に手術が必要というわけでもありません。
短くまとめると、こうなります。 歯周病治療で最も重要なのは、どの治療を受けるかではなく、ご自身の歯周病が正確に何段階目にあるのかを診断してもらうことです。

1段階 — スケーリングは本当に必要ですか?
当院の診療室でよくいただく質問です。「スケーリングをすると歯と歯の間が広がると聞いたのですが、受けなくてもいいのでは?」
スケーリングは、歯の表面と歯ぐきの境目に強固に付着した歯石を取り除く処置です。歯石は歯ブラシでは落ちず、どんなに丁寧にみがいても唾液成分によって自然に硬く沈着していきます。いったん硬くなった歯石を患者さまがご自宅で除去する方法はありません。
「スケーリング後に歯が開いた(隙間が広がった)」と感じられるのは、実は 歯石が埋めていた隙間が露わになって見えるだけなのですです。歯石が歯ぐきを刺激して腫れていた状態で、歯石を除去すると腫れが引き、本来の歯と歯のあいだが見えてくるのです。つまり、スケーリングが歯を広げたのではなく、歯ぐきが正常に戻ったのです。
当院で患者さまにお勧めしているのは、6カ月に1回の定期スケーリングです。満19歳以上であれば、年1回、韓国の健康保険適用を受けられます。
2~3段階 — 歯ぐきの深部清掃(ルートプレーニング)
この段階が、患者さまがいちばん混同しやすいところです。「スケーリングと同じではないのですか?」
違います。通常のスケーリングは、歯ぐきの上(歯ぐきの境目付近)に付着した歯石を除去します。一方、歯周病が進行すると、歯ぐきと歯の間に深いポケット(歯周ポケット)ができ、その奥深くの歯の根の表面に歯石と細菌がこびりつきます。この深い部分まで届いて清掃することを ルートプレーニングと呼びます。
アメリカ歯科医師会(ADA)の公式パネルが72件の無作為化比較試験を解析したメタ分析で、ルートプレーニングは 平均0.5mmの臨床付着レベルの回復をもたらし、補助的な抗生剤や光線力学療法を併用すると0.2~0.6mmが追加で回復しました 1. 0.5mmは小さく見えるかもしれませんが、歯ぐきの後退がそれ以上進まないように止まり、歯槽骨が安定し始めるかどうかの分かれ目がこの数値です。
ここで、患者さまに知っておいていただきたい点があります. ルートプレーニングは麻酔後に行います。患者さまにとっては通常のスケーリングより負担の大きい処置です。ただし、歯ぐきを切る手術ではありません。患者さまが「歯ぐきの手術」と聞いて怖がられる処置の多くは、実はこのルートプレーニングのことです。
4段階 — 本当に歯ぐきの手術が必要なとき
歯ぐきの深いポケットが5mm以上あり、ルートプレーニングだけでは届かない部位がある場合は、本当に歯ぐきの手術が必要になります。種類は次のとおりです。
- 歯ぐき切除術(歯肉切除術)— 腫れている歯ぐきの一部を切り取り、深い部分に届くようにする手術。限られたケースに適用されます。
- 歯ぐき剥離術(フラップ手術)— 歯ぐきをそっと持ち上げ、歯槽骨と歯根表面の歯石・炎症組織を直視下で清掃し、再縫合する手術。現在もっとも一般的に行われている歯ぐきの手術です。
- 歯ぐき再生術— 剥離術の後、溶けた歯槽骨の部位に骨移植材や遮断膜を入れて、骨が再び育つように誘導する手術。患者さまが最も期待される処置ですが、適用できるケースは限られます。
いつも患者さまにそのままお伝えしている言葉があります。 歯ぐきの手術の目的は、歯ぐきを切ることではなく、手が届かなかった深い部分を一度開いて清掃し、閉じることです。患者さまが想像して怖がられるイメージとは異なる場合があります。
歯ぐき再生術で、本当に溶けた骨は戻りますか?
このご質問は、患者さまが最も期待を込めて尋ねられる点です。正直に申し上げると、 一部のケースで一部の回復は可能ですです。
溶けた歯槽骨の形がV字型(中央が深くえぐれた形)であれば、再生術の成功可能性が高まります。反対に、平坦に水平で溶けた歯槽骨は、再生術でもほとんど戻りません。患者さまの歯槽骨がどの形で溶けているかは、診療室でX-rayにて確認します。
「歯ぐき再生術で完全に回復できる」という言い方は、半分だけ正しいです。適応するケースであれば有意な回復が得られますが、そうでない場合は、それ以上進行させないように止めることが目標になります。
すべての段階に共通 — 患者さまの毎日のケア
当院で患者さまに最も頻繁にお伝えしていることです。どの段階の治療を受けられても、ご自宅で毎日ケアを続けなければ結果は維持できません。
- 歯と歯の間の清掃を毎日1回— デンタルフロス、歯間ブラシ、ウォーターピックのいずれかを毎日。
- やわらかい歯ブラシで毎日2回— 歯ぐきの後退を悪化させる強いブラッシングは避けてください。
- 禁煙— 歯周病に対して最も強力な単独の行動です。歯ぐきの手術を受けても喫煙が続けば再発リスクが高くなります.
- 3~6か月の定期チェック— 歯周病と診断された後は、通常は6か月より短い間隔で設定します。
過度に怖がる必要はありません。患者さまが「きちんと治療を受けたのに、また歯周病になったらどうしよう」と心配される必要はありません。歯周病は一生付き合っていく病気です。一度治療して終わりではなく、糖尿病や高血圧のように生涯管理が必要な慢性疾患に近いものです。定期チェックと毎日のセルフケアを続ければ、歯周病が再び進行しないよう安定した状態を保てます.
当院での症例を2例
40代後半の女性患者さま。2段階の初期の歯周炎と診断され、ルートプレーニング(歯根面滑沢術)を受けられました。「歯ぐきの手術」という言葉に当初は強い抵抗感がおありでしたが、ルートプレーニングは麻酔後に行うため、ほとんど痛みなく受けていただけました。3か月後の再検診で、歯周ポケットの深さが5mmから3mmに回復しました。
60代前半の男性患者さま。4段階の重度の歯周炎で、ぐらつく奥歯が1本ありました。患者さまは「どうせ抜けるなら、もう抜いてしまおう」と強く希望されましたが、歯槽骨がV字状に溶けていたケースで再生療法の可能性がありました。歯肉剥離手術(フラップ手術)と再生療法を併用して行いました。6か月後、歯槽骨が一部回復し、その歯はいまも問題なくお使いです。急いで抜歯する決断を先延ばしにされたのが正解でした。
患者さまにぜひ覚えておいてほしい5つのポイント
- 歯周病の治療は4段階に分かれ、段階ごとに処置が異なります。「歯ぐきの手術」という一語に、すべての処置が含まれるわけではありません。
- 患者さまが「歯ぐきの手術」と聞いて怖く感じられる処置の多くは、実はルートプレーニング(歯根面滑沢術)です。歯ぐきを切るのではなく、麻酔をして歯ぐきの内側を清掃する処置です。
- 失われた歯槽骨が元に戻るのは、一部のケースに限られます。歯周組織再生療法は万能ではありません。これ以上進行させないように止めることが、一般的な目標です。
- どの段階の治療を受けても、毎日のケアを怠ると結果は維持できません。歯周病は生涯にわたり管理する慢性疾患に近いものです。
- 「歯ぐきの手術」と診断された場合は、もう一度、別の医師の意見を聞いてみるのも安心です。同じX-rayを見ても、医師によって段階の評価が異なることがあります。
ソウルBD歯科の院長、ムン・ソクジュン(文錫俊)です。患者さまが「歯ぐきの手術」という言葉に驚いて、治療そのものを先延ばしにされないようにという思いで書きました。先延ばしは歯周病には最も危険な選択です。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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Journal of the American Dental Association DOI: 10.1016/j.adaj.2015.01.028