デンタルフロス vs 歯間ブラシ vs ウォーターピック、患者さまに合うのは?

フロス無用論、半分だけ当たっています — 問題はフロスではなく使い方です
先週、40代前半の患者さまが定期検診でいらっしゃいました。「院長先生、インターネットでフロスは効果がないって記事を見ました。だから使っていないんですけど、本当にしなくていいんですか?」と胸を張ってお尋ねになりました。検診の結果、歯と歯の間ごとにプラークがたまり、歯ぐきが赤く腫れていました。結論から申し上げると、「フロス無用論」は半分だけ正しいです。フロス自体が無効なのではなく、使い方が難しくて効果にばらつきが出やすいだけで、歯と歯の間の清掃そのものは必須です。診療室でよく出会う誤解です。
長い説明の前に要点からお伝えします。第一に、「フロスは効果がない」という記事の本当の意味です。第二に、なぜ歯と歯の間の清掃は歯みがきだけでは代替できないのか。第三に、フロス、歯間ブラシ、ウォーターピックの中から患者さまに合う道具を選ぶ基準です.
歯間清掃(歯と歯の間の清掃): 歯ブラシが届かない歯と歯の間のプラークを、デンタルフロス、歯間ブラシ、ウォーターピックなどで取り除くこと。歯と歯の間は歯周病やむし歯が最も始まりやすい場所なので、歯みがきだけでは不足します。
フロスは効果がないって、本当ですか?
最も多いご質問なので、直球でお答えします。
この誤解の出どころを正確にお伝えします。数年前に「フロスの効果を裏づける強力な根拠が不足している」という報道がありました。これは一部事実です。フロスのプラーク減少効果に関する研究は、結果に一貫性がなかったのは確かです [Berchier et al.; Sambunjak et al., Cochrane]。
しかし、重要なのはその次です。研究者たちが解析した結果、フロス自体が無効なのではなく、フロスを正しく、かつ継続的に使えない人が多いために効果にばらつきが出ていたということでした。フロスは使い方が難しく、順守度(継続して使う割合)が低いのです。実際、アメリカ成人の35%しか週に1回でも歯間清掃をしていなかったという調査もあります。
そして最新の結論は明確です。2019年のCochrane体系的レビューは、**"歯みがきに加えてフロスや歯間ブラシを使えば、歯肉炎やプラーク、またはその両方を、歯みがきだけの場合より減らせる"**と結論しました 1.
世間で広く知られていることと実際には、食い違いがあります。「フロスは効果がないからやらなくていい」という考えは、半分だけ正しいのです。フロスの効果にばらつきが出るのは道具のせいではなく、使い方と順守度の問題であり、歯と歯の間の清掃自体は歯ぐきの健康に明らかに役立ちます。
要点を一行でまとめると、こうです。歯間清掃の効果を最も強く左右するのは、どの道具を使うかではなく、その道具を毎日正しく使えているかどうかです。

歯みがきだけでは、なぜ不足するのですか?
第39回(歯みがき)と第40回(むし歯)で簡単に触れた点を整理します。
歯ブラシの毛先は歯の3面(頬側・舌側・咬合面)には届きますが、歯と歯が接する2面(隣接面)には入りません。ですから、どれだけ丁寧に磨いても歯と歯の間にはプラークが残ります。
データでお答えするとこうです。**歯みがき1回で除去できるプラークは平均42~60%**で、歯みがきは歯の前面の清掃により効果的です [van der Weijden 引用]。問題は 歯と歯の間はプラークが最もたまりやすい場所という点です。前歯でも奥歯でも、歯と歯の間がプラーク蓄積リスクが最も高いのです。
つまり、歯ブラシが届かないまさにその部位こそが、歯周病やむし歯が最も始まりやすい場所です。だからこそ歯と歯の間の清掃は「追加オプション」ではなく、歯みがきで抜け落ちる半分を補う必須の工程です。
私たちがカウンセリングで必ずお伝えする一文があります. 歯みがきは歯の面の60%を磨き、歯と歯の間の清掃が残りの40%を磨きます。その40%が歯周病の始まる場所です。
デンタルフロス vs 歯間ブラシ vs ウォーターピック、どれが良いですか?
ここが患者さまが最も知りたい部分です。
| 比較項目デンタルフロス歯間ブラシウォーターピック(口腔洗浄器) | |||
| 適した歯間の状態 | 狭いすき間 | やや広いすき間 | 広いすき間・インプラント・矯正 |
| 歯肉炎の減少効果 | 効果あり | より一貫して効果あり | 効果あり |
| 使い方の難易度 | 難しい(手先の器用さが必要) | 易しい | もっとも易しい |
| 継続率(続けて使えるか) | 低め | 高め | 高め |
| 価格 | もっとも安い | 安い | 高い |
| 携帯性 | 良い | 良い | 悪い |
この表で患者さまにお伝えしたい要点は2つです。
第一に、 歯間ブラシはデンタルフロスより効果が安定しています。コクランの文献レビューでは、歯間ブラシは1ヶ月・3ヶ月時点でデンタルフロスより歯肉炎の減少により効果的である可能性が高いと報告しています 1. 欧州歯周病学会(EFP)でも歯間ブラシの有効性は一貫して認められています。歯間ブラシのほうが使いやすく、継続率が高いことも理由の一つです.
第二に、 最良の道具とは、患者さまが毎日欠かさず使える道具です。デンタルフロスが手技的に難しくてよく挫折してしまうなら、より簡単な歯間ブラシやウォーターピックのほうが患者さまには有効かもしれません。道具間の効果差よりも、毎日使えるかどうかのほうがはるかに大きな違いを生みます。
付け加えたい点が一つあります。 デンタルフロス・歯間ブラシ・ウォーターピックの中で最も良いのは、理論上もっとも効果が高い道具ではなく、患者さまが毎日欠かさず使える道具です。
どの道具がどの方に向いているのでしょうか?
ソウルBD歯科で患者さまにご案内している目安です。
デンタルフロスが向いている方: 歯と歯の間が狭く、歯間ブラシが入らない方。手先に自信がある方。携帯性を重視する方。
歯間ブラシが向いている方: 歯と歯の間にやや隙間がある方。デンタルフロスの使用が難しい、またはよくサボってしまう方。歯周病が進行中で、より確実な清掃が必要な方。
ウォーターピックが向いている方: インプラントや矯正装置がある方。手先が不器用、または手が使いにくい方。歯と歯の間が広い方。ただし、ウォーターピック単独ではバイオフィルム(歯垢)を完全に除去しきれないため、デンタルフロス・歯間ブラシとの併用を推奨します。
特にインプラントのある方は、12編(インプラントの管理法)で述べたとおり、歯間ブラシやウォーターピックがほぼ必須です。
デンタルフロス、正しい使い方
デンタルフロスの効果にばらつきが出る理由の一つは、使い方にあります。正しい方法をご案内します。
- 40cmほどたっぷりと切り取る— 短いと清潔な部分が足りなくなります。
- 歯と歯の間には、のこぎりを引くように小刻みに動かして、やさしく入れます。— 歯ぐきに向けて一気に強く押し込むと、歯ぐきを傷つけます。
- C字の形で歯の側面を包み込むようにします。— デンタルフロスをまっすぐ入れて抜くのではなく、片側の歯の側面をC字に包み込んで上下にこすって清掃します.
- 歯ぐきの下1~2mmまで入れます。— プラーク(細菌膜)は歯ぐきの境目のすぐ下にたまります。歯ぐきの下まで軽く届かせて清掃する必要があります。
- 歯と歯の間ごとに、デンタルフロスの清潔な部分を使います。— 同じ部分を使い続けると、細菌を運んでしまいます。
最初は出血することがあります。これはデンタルフロスのせいではなく、その部位にすでに歯ぐきの炎症があったサインです(17編 歯ぐきの出血 参照)。数日間根気よく続ければ、歯ぐきが健康になり出血はおさまります。
ここで一つご安心ください。『デンタルフロスを使っても血が出るので自分には合わない気がする』と思われたなら、それはデンタルフロスが合わないのではなく、その部位に歯ぐきの炎症があるサインです。数日間続ければ多くは治まります。デンタルフロスがどうしても難しければ、歯間ブラシに替えても大丈夫です。
むし歯予防の効果はどうですか?
正直にお伝えします。歯と歯の間の清掃の 歯ぐきの炎症を減らす効果は明確に実証されていますが、 むし歯予防効果についての直接的な根拠は、まだ十分ではありません。コクランの文献レビューでも、歯と歯の間の清掃がむし歯を減らすという明確な長期研究は不足していると述べています。
ただし、これは『効果がない』という意味ではなく、『長期研究が不足している』という意味です。むし歯は歯と歯の間から始まることが多い点(40編 参考)、そして歯と歯の間の清掃がその部位のプラークを減らす点を考えれば、むし歯予防にも役立つ可能性は高いです。根拠がはっきりしている歯ぐきの健康のためにも、歯と歯の間の清掃は推奨されます。
当院の診療室での症例を2つご紹介します。
40代前半の男性。『デンタルフロスは効果がない』という記事を見て、歯と歯の間の清掃をやめておられました。検診の結果、歯と歯の間ごとに歯ぐきの炎症が進行していました。デンタルフロスの代わりに使いやすい歯間ブラシを毎日使っていただくようご案内したところ、2カ月で歯ぐきの出血が止まり、腫れも引きました. 問題は道具ではなく、歯と歯の間の清掃をしていなかったことでした。
30代後半の女性。デンタルフロスを使っても出血が続くため『デンタルフロスが合わない』としてやめておられました。検診の結果、その部位にはすでに歯ぐきの炎症があり、デンタルフロスの使い方も、まっすぐ入れて抜く誤った方法でした。C字に包み込んでこする方法をご案内したところ、数日で出血は止まりました. 出血はデンタルフロスのせいではなく、歯ぐきの炎症のサインでした。
患者さんにぜひ覚えていただきたい5つのポイントです。
- 『デンタルフロス無用論』は半分だけ正しいです。デンタルフロス自体が無効なのではなく、使い方が難しく継続率が低いため、効果にばらつきが出ていたのです。
- 歯みがきは歯の表面の60%しか磨けません。残りの40%である歯と歯の間は、別途清掃する必要があります。その40%こそ、歯周病が最も始まりやすい場所です。
- 歯間ブラシはデンタルフロスより効果が安定しており、使いやすいです。デンタルフロスが難しければ、歯間ブラシやウォーターピックに替えても大丈夫です。
- 最も良い道具は、患者さんが毎日欠かさず使える道具です。効果の差よりも、毎日使えるかどうかのほうがずっと重要です。
- デンタルフロス使用時の出血は、デンタルフロスのせいではなく、その部位に歯ぐきの炎症があるサインです。数日続ければ、たいていは止まります。
ソウルBD歯科 院長のムン・ソクジュン(文錫俊)です。患者さんが『デンタルフロスは効果がない』という記事一つで、歯と歯の間の清掃を丸ごとやめてしまわれないようにと思い、書きました。問題はデンタルフロスそのものではなく、歯ブラシが届かないあの40%を空白のままにしてしまうことです。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
-
1
Cochrane Database of Systematic Reviews DOI: 10.1002/14651858.CD012018.pub2