神経治療(根管治療)の痛み vs 抜歯の痛み、どちらがより痛いですか

神経治療(根管治療)後の平均痛みは10点満点で2.58点、ネットで言われるより軽いです
先週、診療室に40代後半の患者さまが奥歯の痛みで来院されました。検査の結果、神経治療(根管治療)が必要な状態でした。患者さまが最初におっしゃったのはこうでした。「院長先生、神経治療ってそんなに痛いって聞きました…いっそ抜いてインプラントにしたほうがいいですか?」患者さまの表情には深い恐怖がありました。結論から申し上げますと、神経治療(根管治療)はインターネットでご覧になるほど怖い治療ではありません。270人の患者さまにおける神経治療後の平均痛みは10点満点で2.58点、つまり軽い水準でした。ご相談の場でよくお見かけする恐れのパターンです。
本稿でぜひ覚えておいていただきたいことを先に書きます。第一に、神経治療(根管治療)後の実際の痛みは平均的に軽く、患者さまがインターネットで目にする恐怖レベルではありません。第二に、神経治療(根管治療)は痛みを作るのではなく止める治療です。第三に、神経治療(根管治療)が怖くて抜歯を選ぶという判断は、16回で扱った自然歯保存の原則と相反します。
神経治療(根管治療, root canal treatment): むし歯や外傷で歯の内側の神経(歯髄)が損傷した場合に、歯の内側の神経を取り除き、その空間を封鎖して歯を残す治療です。抜歯せずに患者さまの自然歯を生涯使えるようにすることが目的です。
神経治療(根管治療)は本当にそんなに痛いのですか?
最も多いご質問なので、結論からお伝えします。
根拠を見てみましょう。神経治療(根管治療)を受けた270名の患者さまを追跡した前向き研究では 神経治療(根管治療)後の平均痛みは10点満点で2.58点でした。軽いと中等の中間くらいの水準です 1. そしてその痛みも48時間以内に半減し、72時間後にはほぼ消失しました。
系統的レビューの結果はさらに明確です。 神経治療(根管治療)後24時間時点の痛みの発現率は40%、7日後には11%に低下します2. つまり、患者さま10人のうち4人が初日は軽い不快感を覚えますが、1週間後には約9人が痛みなく日常に戻られます。
ここでよくある誤解を一つ正しておきます。「神経治療(根管治療)はとても痛くて怖い治療」という認識は、半分も当たりません。 現代の神経治療(根管治療)は局所麻酔下で行い、治療中の痛みはほとんどなく、治療後の痛みも平均的に軽い水準です。患者さまが怖がられるのは、たいてい30~40年前の神経治療の記憶か、インターネットで共有された極端な事例です.
この点は次のように覚えておいてください。 神経治療(根管治療)後の痛みの強さを最も左右するのは、患者さまの痛みに対する強さではなく、治療前にどれだけ痛かったかです。強い痛みの状態で治療を受けると、その後の痛みも大きくなります。

神経治療(根管治療)は痛みを起こす治療ではなく、痛みを止める治療です
この点が患者さまが最も混同しやすいところです。
神経治療(根管治療)が必要となる状況は次のとおりです。
- むし歯が深く進行し、歯の内側の神経まで達した場合
- 外傷で歯の神経が損傷した場合
- 神経が壊死し、その場で炎症が進行している場合
- 神経治療(根管治療)後に再び炎症が再発した場合(再根管治療)
これらすべての状況で、患者さまが経験される 治療前の痛みは、治療後の痛みよりはるかに大きいです。むし歯が神経に達した後に生じる痛み、特に眠りから目を覚ますほどの拍動性の痛みは、患者さまにとって耐えがたいレベルです。神経治療(根管治療)は、この痛みの原因(感染した神経)を取り除く治療です。
平たく言えば、 神経治療(根管治療)は痛みを生み出す治療ではなく、痛みを止める治療です。治療後に数日ほど軽い不快感が出ることはありますが、治療前の拍動性の痛みとは比べものになりません。
| 比較項目神経治療(根管治療)前(感染状態)神経治療(根管治療)後(治療直後) | ||
| 痛みの様子 | 拍動性で、深く鈍い痛み | 軽いズキズキ感または圧迫感 |
| 痛みの強さ(VAS) | 6~10/10 もあり得ます | 平均 2.58/10 |
| 痛みの持続 | 数日〜数週、自然には止まりません | 24~72時間 |
| 目覚めたとき | 最も強い | ほとんどありません |
| 鎮痛薬の効果 | 次第に弱まります | よく効きます |
| 時間がたつと | さらに悪化し、最終的には緊急対応に | 徐々に消えていきます |
それでも、治療中は痛くないのですか?
当院で患者さまからよくいただくご質問です.
現代の神経治療(根管治療)は、次のような麻酔環境で行います。
- 局所麻酔の注射— 治療部位の歯ぐきと歯の神経の周囲までしっかり麻痺します。麻酔が十分に効くまで5~10分待ってから開始します.
- ゴム膜(ラバーダム)の使用— 治療部位だけを隔離し、患者さまからは小さな穴の中で作業しているように見えます。ほかの部位に刺激が及びません。
- 追加の部分麻酔— 治療中に不快を感じられたら、すぐに麻酔を追加します。
当院で患者さまに必ずお伝えしている一言があります。 神経治療(根管治療)中に痛みを感じたら、それは正常ではなく麻酔が不十分というサインです。不快を感じたら、すぐに手を挙げて医師にお知らせください。医師が麻酔を追加すれば、その痛みはすぐに消えます。
治療中に患者さまが感じやすい一般的な感覚は次のとおりです。
- 口を長く開けていることによる顎の疲れ
- 振動(ドリル)が当たるときの軽い圧迫感
- 口腔内に入る器具のひんやりした感触
- まれに麻酔が少し切れてきたような感覚(すぐにお知らせいただければ追加します)
これらの感覚はすべて痛みとは異なります。検索で見かける「神経治療(根管治療)で悲鳴」などの極端な事例は、麻酔が十分でない状態で行われた過去のケースです。
もう一つ付け加えます。 神経治療(根管治療)中に痛みを感じたら、それは医師の麻酔が不足しているということです。患者さまが我慢すべき義務ではなく、知らせるべきサインです。
神経治療(根管治療)後の痛み、どんな方が強く出やすいのでしょうか?
同じ270名の研究で、神経治療(根管治療)後の痛みが平均より強かったケースの傾向が示されました。
- 治療前の痛みが強かった方— 最も強力な予測因子です。治療前の痛みが強いほど、治療後の痛みも強くなります。
- 下顎小臼歯— 他の歯に比べて痛みが生じるリスクが約7.2倍高い傾向でした(odds ratio 7.2).
- 女性— 一般的に痛みの申告がやや高い傾向があります。
- 神経が死んで膿瘍ができた状態— 単純なむし歯よりも治療後の負担が大きくなります.
これが患者さまにとって示す意味は明確です。 我慢なさらず、できるだけ早く受診してください。治療前の痛みが強いほど、治療後の負担も大きくなります。患者さまが"もう少し我慢してみようかな"と思われたその時間が、最終的には治療結果にまで影響します。
ここで一つ、はっきりとお伝えできる安心材料があります。すでに強い痛みで受診されているのであれば、ご自身を責めないでください。 痛みを我慢してから来院されるのは、あなただけのことではありません。痛みが怖く、受診が不安で先延ばしにしてしまうのはとてもよくあることです。今から受診されても、決して遅い選択ではありません。
神経治療(根管治療) vs 抜歯、痛みで比較すると
この点が、患者さまがご判断される際に最も重要な比較になります。
| 比較項目 神経治療(根管治療) 抜歯 + インプラント | ||
| 治療中の痛み | 麻酔後はほとんどありません | 麻酔後に圧迫感があります |
| 治療後の平均疼痛 VAS | 2.58/10 | 抜歯 5~6/10、インプラント 2/10 |
| 痛みの持続期間 | 24~72時間 | 抜歯 3~5日、インプラント 2~4日 |
| 来院回数 | 1~3回の来院 | 抜歯 1回 + 植立 1回 + 補綴 1回 |
| 総治療期間 | 1~3週 | 3~12か月 |
| 天然歯の保存 | 可能です | 不可能です |
| 費用 | 神経治療(根管治療)+ 補綴 | 抜歯 + インプラント + 補綴 (通常は3~5倍) |
| 生涯の予後 | 適切に行われた神経治療(根管治療)は、天然歯をそのまま使えます | インプラントで代替します |
この表が患者さまにお伝えしたい核心はシンプルです。 痛みへの恐怖が、神経治療(根管治療)と抜歯の選択を左右する決定的な理由にはなりにくいのです。神経治療(根管治療)後の平均的な痛みは抜歯後の痛みよりも軽く、神経治療(根管治療)は自然歯を残せる唯一の方法です.
16編で取り上げた自然歯 vs インプラントの原則をもう一度確認すると、次のとおりです。 適切に治療された自然歯の生存率は、インプラントとほぼ同じか、むしろ高い場合があります。神経治療(根管治療)が怖くて抜歯へ進むという決断は、患者さまの自然歯を一度に永遠に失う決断です。
神経治療(根管治療)後の痛みが4日以降に再び強くなったら
当院で事前にご案内している危険サインです。
正常な経過:
- 治療直後〜24時間: 軽いズキズキ(VAS 2~3)
- 48時間: 痛みが半分に減少
- 72時間: ほぼなし
- 1週間: 95%が痛みなし
危険サイン:
- 4日以降に痛みが再び強くなる場合
- 歯ぐきが腫れてくる場合
- 発熱(38度以上)
- 口が開けにくくなる場合
- 歯を押すと強い痛みが出る場合
- 歯ぐきの間から膿や嫌なにおいがする場合
これらのサインがあれば、その日のうちに当院へご連絡ください。神経治療(根管治療)中に一部の細菌が残っているか、新たな感染が始まった可能性があります。早く確認できれば、簡単な処置で済むことがほとんどです。
当院の症例を2例
50代前半の女性の患者さま。奥歯の神経治療(根管治療)が怖くて1年以上先延ばしにしていたとのこと。結局、痛みに耐えられず受診されました。治療直後の痛みはVAS 3/10、48時間後はVAS 1/10、7日後は痛みなし。患者さまは「なぜ1年も先延ばしにしたのか後悔しています」とおっしゃいました。 恐怖そのものよりも、さらに恐ろしいのは耐えてきた時間でした。
40代後半の男性の患者さま。深いむし歯で神経治療(根管治療)が必要でしたが、「もう抜いてインプラントにしよう」と強く希望され、費用も比較されたとのこと。2つの選択肢の長所・短所を丁寧にご説明したうえで、患者さまは神経治療(根管治療)を選択。5年が経った今も、その歯を問題なくお使いです。 自然歯は一度抜いてしまうと戻りません。
患者さまにぜひ覚えていただきたい5つ
- 神経治療(根管治療)後の平均的な痛みは10点満点で2.58点です(270名のデータ)。インターネットで目にするような恐怖レベルではありません。
- 神経治療(根管治療)後、7日が過ぎると患者さまの89%が痛みなく日常に戻られます。24時間の痛み 40% → 7日 11%。
- 神経治療(根管治療)は痛みを生み出す治療ではなく、止めるための治療です。治療前の拍動性の痛みが、治療後は軽いズキズキに変わります。
- 治療中に痛みを感じるなら、麻酔が足りていないということです.医師に手を上げてすぐにお知らせください。麻酔を追加します。患者さまが我慢する義務はありません。
- 神経治療(根管治療)が怖くて抜歯へ進むという決断は、自然歯を永遠に失う決断です。16編で取り上げた『自然歯 vs インプラント』の原則を、もう一度思い出してみてください。
ソウルBD歯科のムン・ソクジュン(文錫俊)院長です。患者さまがインターネットで見た神経治療(根管治療)の恐怖にとらわれ、自然歯を抜く決断をなさらないようにとの思いで書きました。神経治療(根管治療)は患者さまの自然歯を救える最後のチャンスです。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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1
Journal of Dentistry DOI: 10.1016/j.jdent.2008.07.011
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2
Journal of Endodontics DOI: 10.1016/j.joen.2010.11.029