インプラント1本に1時間? 実は埋入そのものは1~3分です

インプラント1本に1時間? 実は埋入そのものは1~3分です
先週、診療室で50代前半の患者さまとお会いしました。インプラントの相談で、最初のご質問がこれでした。「院長先生、本当に5時間もかかるんですか? あるブログにそう書いてあって…」結論から申し上げると、そうではありません。患者さまが検索すると、5分から12時間まで情報がまちまちで混乱なさるのも無理はありません。カウンセリング中に同じご質問をよくいただきます。
まず結論を整理してから始めます。第一に、患者さまがチェアにお座りになる全体の時間と、実際にインプラントを埋入する時間は別物です。第二に、時間が長くなるほど痛みや腫れが増えやすいので、「手術時間」は患者さまにとって重要な指標です。第三に、時間を短縮できる技術は実際にあります。ただし、すべての症例に適用できるわけではありません。
インプラントの手術時間: インプラント(人工歯根)を歯ぐきと骨に埋入するために、患者さまが診療用の椅子に座ってから麻酔開始から縫合終了までに要する全体の時間。単純な1本の埋入では約30~60分が一般的です.
インプラント1本の埋入は本当にどのくらい時間がかかりますか?
最も多くいただくご質問ですので、結論からお伝えします。
当院での平均は次のとおりです。
- 単純なインプラント1本の埋入: チェアにお座りいただく全体の時間は30~60分、そのうち実際にインプラントを骨に埋め込む時間は通常15~25分
- 単純なインプラント2~3本の埋入: 60~90分、各部位につき埋入そのものは1本あたり10~15分を追加
- 骨移植(GBR)併用の1本埋入: 60~90分
- サイナスリフト(上顎洞挙上術)併用の1本埋入: 90~120分
- 全顎インプラント(いわゆるオールオンフォー): 両側合わせて3~5時間
広く流布している考えを一つ押さえておきます。「インプラント手術は必ず長くて怖い大手術」という考えは、半分だけ正しいです。 単純な1本の埋入は、親知らずを1本抜く時間と同じか、むしろ短いこともあります。親知らずの抜歯がふつう30~60分かかることを思い出していただくと、イメージしやすいはずです。米国インプラント歯科学会(AAID)も、単一インプラントの埋入を約1~2時間の範囲で案内しています。

では、その60分のあいだにいったい何をしているのでしょうか?
このご質問は患者さまが本当によく気にされます。イメージしづらいからです。時間を段階ごとに分かりやすくお伝えします(単純な1本の埋入の場合)。
- 着座して体勢を整え、消毒、滅菌ドレープをかける — 5~10分
- 局所麻酔の注射後、十分に麻酔が効くまで待機 — 5~10分。この時間が意外と長いのです。麻酔が十分に効かない状態で進めると、患者さまが痛みを感じます。
- 歯ぐきを切開して骨を露出 — 5分. 無切開(フラップレス)方式であれば、この段階はほとんどありません。
- ドリルで骨に孔を形成(パイロットドリルから順に径を太くする) — 5~10分。このときの振動が最も気になりやすいタイミングです.
- インプラント本体を埋め込む — 1~3分。意外と短いです。
- 縫合 — 5~10分
- 写真撮影、後片づけ — 5分
ここで覚えておいていただきたいのは、この一文です。 インプラント手術では、患者さまが椅子に座っている時間の半分以上は麻酔・切開・縫合にあてられ、肝心のインプラント本体を埋入する作業自体は1~3分で終わります.
同じインプラントなのに、なぜ所要時間が倍も違うのですか?
当院の診療室でもよくいただくご質問です。時間が延びる要因は患者さまのご意思ではなく、次の7つです。
- 骨移植(GBR)を併用する場合— 骨が不足している部位に人工骨を充填する工程が加わります。30~40分ほど追加されます。
- サイナスリフト(上顎洞挙上術)を併用する場合— 上顎の奥歯の部位で上顎洞をそっと持ち上げる術式です。追加で60分以上かかることがあります。
- 複数本を一度に埋入する場合— 1本あたり約10~15分ずつ追加されます。
- 骨が非常に硬い部位(例:下顎の後方)— ドリルで埋入孔を形成するのに時間がよりかかります。
- コンピューターガイド(サージカルガイド)の使用有無— あらかじめ患者さまの口腔模型に合わせて作製したガイドに沿って、正確な位置にドリルが入ります。椅子でお過ごしいただく時間が短くなります。
- 無切開(フラップレス)方式の可否— 歯ぐきを切開せず、小さな孔だけを開けて埋入します。適用できる症例が限られており、すべてに当てはまるわけではありません。
- 追加の麻酔が必要な患者さま— 痛みに敏感な方や麻酔が効きにくい体質の方は、麻酔だけでさらに5~10分かかることがあります。
過度に心配なさる必要はありません。患者さまが「手術時間が長くなったのは自分のせいだろうか」と気にされる必要はありません。上の7項目のうち、患者さまが直接コントロールできることはほとんどありません。多くは骨や歯ぐきの状態、そしてどの術式が患者さまに適しているかで決まります。
一般手術とコンピューターガイド手術で、時間の差はそんなに大きいのですか?
| 比較項目 一般(フリーハンド)手術 コンピューターガイド手術 | ||
| チェアタイム(1本あたり) | 30~60分 | 20~40分 |
| 歯ぐきの切開 | ほとんどで必要です | 無切開で可能な場合が多いです |
| 埋入の正確性 | 術者の経験に依存します | 事前のバーチャルシミュレーションで位置を決定します |
| 患者報告の痛み・腫れ | 平均的です | より低い傾向です |
| 費用 | 標準的です | ガイド作製費が追加されます |
| 適応となる症例 | ほぼすべての症例 | 骨量と隣接構造がガイド作製に十分な場合 |
系統的文献レビューでは、コンピューターガイド手術は患者さまが報告する術後の痛み・腫れがより低く、無切開方式と組み合わせたときにその効果が際立つという結果が報告されています 1。ただし、同じレビューではインプラントの生存率自体については両方式の間に統計的に有意な差はないと報告されています。つまり、どの方式でもしっかり定着すれば同じようにお使いいただけます。ガイド手術の本当の利点は、患者さまのチェアタイムと回復期間の負担を減らすことであって、より長持ちするインプラントを作ることではありません。
手術時間が短ければ無条件に良いのでしょうか?
これが、患者さまにこの文章から持ち帰っていただきたい最も重要なポイントかもしれません。
結論から申し上げますと、短いほど痛み・腫れは少なくなりますが だからといって、すべてのケースを速く終わらせるのが良いという意味ではありません。「1時間でインプラント完了!」という広告を検索でご覧になったことがあるかもしれません。早い施術は単純なケースでは正確で安全ですが、骨が不足していたり隣接する神経・副鼻腔が近いケースでは、十分に時間をかけるほうが精度と安全性が高まります.
当院の診療室で患者さまにお伝えする答えは、いつもこうです。 "速いインプラントではなく、患者さまに合ったインプラントこそが良いインプラントです。"検索で見た所要時間を、そのまま診療室で求めないでください。患者さまの骨と歯ぐきの状態は、ほかの方とは異なります。
当院の診療室の事例を一つ
40代後半の女性の患者さま。奥歯1本の埋入のために来院されました。CT検査の結果、骨の厚みは十分で、隣接神経との距離も安全圏でした。コンピューターガイドを作製し、無切開(フラップレス)方式で実施。椅子にお座りいただいてから縫合まで、所要時間は28分でした。患者さまが「こんなに早いんですか?」と驚かれていたのを覚えています。翌日も痛み・腫れはほとんどなかったとおっしゃいました。
同じ月、60代前半の男性の患者さまは、上の奥歯の部位に骨がほとんどなく、サイナスリフト(上顎洞挙上術)を併用する必要がありました。チェアタイムは約95分。翌週、別の50代の患者さまは単純な1本埋入で約45分。同じ診療室、同じインプラントシステム、同じ術者でも、患者さまによっては時間が2倍違います。 時間の差は、医師が速い・遅いからではなく、患者さまのお口の中の条件が異なるためです。
患者さまにぜひ覚えておいていただきたい5つのポイント
- 単純なインプラント1本の埋入は、チェアタイム30~60分が一般的です。親知らずを抜くのと同じくらいの時間です。
- このうち、インプラント本体を骨に埋め込む時間は1~3分, 残りは麻酔・切開・縫合・ドリリングの工程です。
- 所要時間を長くする要因は、患者さまの意思ではなく、骨と歯ぐきの状態です。自分を責める必要はありません。
- コンピューターガイドと無切開(フラップレス)方式はチェアタイムと回復の負担を減らしますが、すべてのケースに適しているわけではありません。
- 速いインプラントではなく、患者さまに合ったインプラントこそが良いインプラントです。時間だけで医師を判断なさらないでください。
ソウルBD歯科 院長、ムン・ソクジュン(文錫俊)です。患者さまが「5時間かかるらしい」という話に怖くなって、1年も先延ばしにされないことを願って書きました。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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BMC Oral Health DOI: 10.1186/s12903-017-0441-y