クラウン・ブリッジ・インプラント・入れ歯(義歯)、それぞれどう磨けばよいですか

被せた歯はもうむし歯にならないはずなのに、なぜまたむし歯に——補綴物は磨き方が異なります
50代後半の患者さまが、少し腑に落ちないご様子で来院されました。数年前に被せたクラウンの隣にまたむし歯ができたと言われたばかりとのことでした。「院長先生、私は1日3回きちんと磨いています。被せた歯はもうむし歯にならないって言うのに、どうしてまたこうなるんですか?」私はこうお伝えしました。「歯みがき自体はよくできています。問題は、歯ブラシが届かない場所があること、そして補綴物ごとに少しずつ磨き方が違うという点です。」
これまでの7回でクラウン・ブリッジ・インプラント・入れ歯(義歯)を取り上げてきました。そのたびに「境目の管理が寿命を左右します」「支台歯を守りましょう」「入れ歯(義歯)は外して洗いましょう」と繰り返しお話ししましたが、方法を一つにまとめたことはありませんでした。今回はその統合管理編です。患者さまにぜひ覚えていただきたいのは三つです。第一に、なぜ歯ブラシだけでは不十分なのか。第二に、補綴物ごとに磨き方がどう違うのか。第三に、インプラントでむしろ注意すべき道具があることです。
まず用語を整理しておきます。
隣接面の清掃: 歯ブラシが届かない歯と歯の間、補綴物と歯ぐきが接する境目を、フロスや歯間ブラシで清掃すること。補綴物まわりのむし歯や歯ぐきの病気は、多くがこの届きにくい部位から始まります。
なぜ歯ブラシだけでは不十分なのですか?
まず最初に押さえるべき点です。歯ブラシの毛先は、歯の外側や噛む面はよく磨けますが、歯と歯の狭い隙間には入り込めません。補綴物のトラブルが始まるのは、まさにこの隙間です。
根拠もお示しします。複数研究の総合評価であるコクランレビューは、歯みがきに加えてフロスや歯間ブラシを使うと、歯みがきのみの場合より歯ぐきの炎症やプラークがより減少しうるとまとめています。さらに、歯間ブラシはフロスより効果的な場合があるともしています 1.
補綴物が長持ちするかどうかを最も強く決めるのは、歯みがきの回数ではなく、歯ブラシが届かない境目や隙間を清掃できているかどうかです。被せた歯が再びむし歯になるのは、たいていこの隙間の清掃を見落としているからです。

補綴物ごとに磨き方は違うのですか?
はい、異なります。種類別の要点をまとめました。
- クラウン(被せ物): クラウンと歯ぐきが接する境目を集中的に清掃します。その境目の内側の自然歯が、むし歯になりやすいポイントです。フロスや細めの歯間ブラシで境目をなぞるように清掃します。
- ブリッジ(橋渡しの補綴): 橋のようにかかっている人工歯の下には空間があり、食べかすが溜まります。一般的なフロスは通らないため、糸を通す器具(フロススレッダー)や先端が硬い専用フロスで橋の下を掃除します。
- インプラント: 歯ぐきとの境目や隙間を、歯間ブラシでやさしく清掃します。後ほど注意点があります。
- 部分入れ歯(義歯): クラスプがかかる自然歯(支台歯)まわりをとくに念入りに磨き、入れ歯(義歯)本体は外して別に洗浄します。
入れ歯(義歯)はどうやって洗いますか?
入れ歯(義歯)は、口の中での磨き方とは管理が異なります。いくつか原則があります。
入れ歯(義歯)は毎日外し、専用の洗浄剤ややわらかいブラシで洗います。一般的な歯みがき粉は粒子が粗く、義歯表面に微細な傷をつけ、その傷に細菌が付着しやすくなります。また、夜は外して歯ぐきを休ませるのが望ましいです。1日中歯ぐきを覆ったままだと、カビ(真菌)による炎症(義歯性口内炎)が起こりやすくなります。外した入れ歯(義歯)は乾燥すると変形するため、水や洗浄液に浸して保管します。
インプラントにはフロスが一番ではないのですか?
ここでよくある通念を一つ確認します。「インプラントも自然歯と同じで、フロスで磨くのが一番だ」— 半分だけ正解です。
インプラント周囲の清掃が大切なのは事実です。ただし、インプラントは自然歯と付着の構造が異なるため、フロスがかえって問題になる場合が報告されています。インプラントの下方の粗い部位にフロスの繊維が切れて残ると、その残渣が歯ぐきに刺さり炎症を起こすことがあるという観察があります 2. そのため、インプラント周囲ではフロスを無理にノコギリのように使うより、やわらかい歯間ブラシや口腔洗浄器を併用することが推奨されます。どの太さの歯間ブラシが合うかは、診療室で合わせてみるのが良いでしょう。
補綴物別の清掃ツールをひと目でまとめると
| 補綴物主要な清掃部位主に使う道具 | ||
| クラウン | 歯ぐきと接する境目 | フロス、細めの歯間ブラシ |
| ブリッジ | ポンティック下の空間 | フロスピック・専用フロス |
| インプラント | 歯ぐきとの境目・すき間 | 歯間ブラシ・口腔洗浄器(フロスは慎重に) |
| 部分入れ歯(義歯) | バネがかかる天然歯+入れ歯(義歯)本体 | 歯ブラシ+入れ歯専用洗浄剤 |
補綴物を長く使うためのケア7つ
- 境目を狙う意識で磨きましょう— 補綴物の表面ではなく、歯ぐきと接する境界線が肝心です.
- 1日1回は歯間ブラシかフロスで、すき間を清掃しましょう。— 歯ブラシが届かない部分をカバーします。
- ブリッジは橋の下を必ず通して清掃しましょう。— 最も食べかすがたまりやすい場所です。
- インプラントにはフロスは慎重に。— 歯間ブラシ・口腔洗浄器を併用しましょう。
- 入れ歯は外して専用洗浄を。歯みがき粉は避けましょう。— 表面の傷付きを防ぎます。
- 夜は入れ歯を外して歯ぐきを休ませましょう。— 真菌性の炎症を減らせます。
- 定期的に歯科医院で専門クリーニングを受けましょう。— ご自宅では磨けない部位をケアします。
またむし歯ができても、自分を責めないでください。
被せた歯にまた問題が起きると「自分のケアが悪かったからだ」と自責される方が多いですが、その必要はありません。
ご覧のとおり補綴物は種類ごとに磨き方が異なり、それをきちんと学ぶ機会がなければ見落として当然です。どんなに丁寧に歯みがきをしても、道具や狙う部位が合っていなければ、汚れはすき間に残り続けます。ケアを怠ったのではなく、適切な方法をまだ身につけていなかっただけかもしれません。今日その方法を知っていただけたので、これからは境目とすき間を意識して磨いていきましょう。
当院の症例を2例ご紹介します。
50代後半の男性患者さま。歯みがきは熱心でしたが、クラウンの境目をフロスで清掃したことがなく、その下にむし歯ができていました。境目をなぞるフロス・歯間ブラシの使い方を習得されてからは、同様の問題が減りました。 歯みがき自体の問題ではなく、届かない部位の問題でした。
40代後半の女性患者さま。インプラント周囲を天然歯と同じ感覚でフロスで強くこすっていたため、歯ぐきに炎症を繰り返していました。歯間ブラシと口腔洗浄器に切り替えると、炎症は落ち着きました。 インプラントは天然歯とは少し磨き方が異なります。
患者さまにぜひ覚えていただきたい5つのポイント
- 歯ブラシだけでは不十分です。補綴物のトラブルは、歯ブラシが届かないすき間から始まります。
- 肝心なのは歯ぐきとの境目です。その下の天然歯でむし歯が生じやすい場所です。
- 補綴物ごとに磨き方が異なります。ブリッジは橋の下、部分入れ歯(義歯)はバネがかかる歯を狙います。
- インプラントではフロスは慎重に、歯間ブラシ・口腔洗浄器を併用しましょう。
- 入れ歯は外して専用洗浄で清掃し、夜は外して歯ぐきを休ませましょう。
ソウルBD歯科 ムン・ソクジュン(文錫俊)院長です。「被せた歯はもうむし歯にならない」という言葉だけを信じて境目を見落とし、再び来院される方が多いため、補綴物ごとに磨き方が異なることをぜひ一度まとめてお伝えしたいと思いました。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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4:CD012018 DOI: 10.1002/14651858.CD012018.pub2
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2
27(5):618–621 DOI: 10.1111/clr.12650