本当にうまく磨くには、回数よりも方法が大切です

1回の歯みがきで平均42%しか落ちません。問題は磨き残しです
先週、40代前半の患者さまが定期検診で来院されました。「院長先生、私、歯みがきは本当に一生懸命やっているんです。バス法が良いと聞いたので、それで1日3回やっています」。ところが検診の結果、特定の部位、特に奥歯の内側と歯ぐきの境目に歯垢が残っていました。患者さまは不思議そうにされました。「やり方どおりにしたのに、なぜ落ちていないんですか?」結論から申し上げると、歯みがきで大切なのは、どんな手法を使ったかよりも、磨き残しなく全体を均一に磨けたかどうかです。診療現場でよく出会うパターンです。
先に結論を整理して始めます。第一に、「最高の歯みがき法」は何かというデータについて。第二に、1回の歯みがきで実際どれくらい落ちるのか、そして磨き残しがなぜ問題なのかについて。第三に、手法よりも大切な、歯みがきの本当の核心です。
歯みがき(ブラッシング): 歯ブラシで歯面と歯ぐきの境目に蓄積した歯垢(プラーク)を除去すること。歯垢は歯周病とむし歯の最大の原因で、除去しないと硬くなって歯石になります。歯みがきは、この歯垢を毎日取り除く最も基本的な方法です。
どの歯みがき法がいちばん良いのですか?
よくいただくご質問ですので、端的にお答えします。
率直に申し上げると、 どの歯みがき法が最も優れているかについて、明確な科学的結論はまだありません。13件の研究を検討した系統的レビューで、バス法・回転法・チャーターズ法など複数の歯みがき法を比較しましたが いずれか一つの方法が他の方法より歯垢除去や歯肉炎予防に優れているとする十分な根拠はありませんでした[Effectiveness of Manual Toothbrushing Techniques on Plaque and Gingivitis: A Systematic Review, 2024, PMC11654539]. 無作為化比較試験を集めたネットワークメタ解析でも、歯みがき技法の効果は不確実だと結論づけました 1.
広く浸透した考えを一つ押さえておきます。「バス法のような特定の方法を正確に行えば、歯みがきが上手にできる」という考えは、半分だけ正しいです。 テクニックそのものよりも、そのテクニックで全ての歯面を漏れなく磨けているかどうかの方が、はるかに重要です。どんなに正確なバス法でも、奥歯の内側を抜かせば、その部位に歯垢は残ります。
ここで覚えていただきたい一文はこれです。 歯みがきが上手くできたかを最も強く左右するのは、どの手法を使ったかではなく、磨き残しなく全ての歯面と歯ぐきの境目を磨けたかどうかです。

1回の歯みがきでどれくらい落ちますか?
ここは患者さまが驚かれるデータです。
59件の研究を解析した系統的レビューで、**1回の歯みがきで除去できる歯垢は平均42%**でした(範囲 30~53%) [van der Weijden GA et al., 2010, Journal of Clinical Periodontology, PMID: 22672101]. つまり、1回の歯みがきでは歯垢の半分程度しか除去できず、残りは残るということです。
これが意味することは二つあります。第一に、 一度で完璧には落ちないため、毎日こつこつ繰り返すことが重要です。第二に、 うまく磨けない部位が毎回同じなら、その部位に歯垢が蓄積し続けます。無意識にいつも抜かしてしまう部位(奥歯の内側、歯ぐきの境目、歯と歯の間)に歯垢が蓄積して、歯周病やむし歯が始まります.
同じ研究で重要な発見がもう一つあります。 ブラシ毛の配列と磨く時間が、歯垢除去効果に影響していました。つまり、どんな動き(テクニック)かより、十分な時間と適切な歯ブラシの方が重要でした。
もう一つだけ強調します。 1回の歯みがきでは歯垢の半分しか落ちません。ですから、毎回同じ部位を抜かしてしまうと、その部位に歯垢がたまり続けます。
では、本当に重要なのは何でしょうか?
当院の診療室で患者さまに強調している核心です。手法よりも、次の四つが大切です。
1. 漏れのないカバー(すべての面を磨く)— 歯1本につき磨くべき面は3カ所(外側、内側、咬合面)です。とくに抜かしやすいのは、奥歯の内側面と下の前歯の内側面です。一定の順番を決め、いつも同じルートで磨くと、磨き残しが減ります。
2. 十分な時間(2分)— 推奨の歯みがき時間は2分です。ただ、興味深いデータがあります。あるメタ解析で 歯みがきの最初の1分で最も多くのプラークが除去され、時間が経つほど追加の除去量はなだらかに減っていくという曲線を示しました 2. つまり、最初の1分が最も効率的ですが、2分までみがけばさらに除去できます。多くの方が実際には1分もみがけていないため、2分を守るだけでも大きな差が出ます.
3. やわらかめの歯ブラシ(soft)を使う— 硬い毛の歯ブラシは、プラーク除去効果が特に高いわけではないのに、歯ぐきやエナメル質をすり減らします。やわらかい毛で十分です。第38回(知覚過敏)で述べたように、強い力での歯みがきは歯ぐきの退縮やしみの原因になります。
4. 歯ぐきの境目をみがく— プラークが最もたまりやすく、歯ぐきの病気が始まりやすいのが、歯ぐきと歯が接する境目です。歯ブラシを歯ぐき側に45度傾け、この境目をやさしくみがくのがポイントです。
過度に心配なさらなくて大丈夫です。患者さまが「バス法を正確にできないから歯みがきが不十分なのでは」とご自分を責める必要はありません。 完璧なテクニックよりも、上の4つ(漏れなく、2分、やさしく、歯ぐきの境目)を守るほうがずっと重要です。複雑なテクニックを覚えようとするよりも、この4つに集中してください。
歯みがきだけでは不十分な理由
ここは患者さまにぜひ知っていただきたい点です。
先ほど、一度の歯みがきで平均42%しか落とせないとお伝えしました。ところが、歯ブラシが届かない部位があります。 歯と歯のあいだです。歯ブラシの毛先は歯と歯の狭いすき間に入りません。だから、どんなに上手にみがいても、歯と歯のあいだにはプラークが残ります。
歯と歯のあいだは、歯周病やむし歯が最も起こりやすい場所です。ですから、 歯みがきに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯のあいだを毎日清掃してください。歯みがきだけでは歯の表面の三面しかみがけず、歯と歯のあいだの二面は残ります。歯間清掃については第41回でさらに詳しく扱います。
患者さまにいつもお伝えしていることがあります. 歯みがきは歯の清掃のすべてではなく、半分です。残りの半分は、歯と歯のあいだの清掃です。
歯みがきは、いつ・どう行えばよいですか?
当院の診療室で患者さまにおすすめしている実用ガイドです。
| 項目/推奨 | |
| 回数 | 毎日2回(朝・就寝前)。食事のたびに行う必要はありません |
| 時間 | 2分 |
| 歯ブラシの硬さ | やわらかめ(soft) |
| 交換時期 | 3カ月、または毛先が開いてきたら |
| 角度 | 歯ぐき側へ45度 |
| 力加減 | 軽く(強く押し当てない) |
| 歯みがき粉 | フッ素配合 |
| 食後の歯みがき | 酸性の食べ物の直後は30分待ってから |
いくつか、患者さまからよくいただくご質問を整理してお伝えします。
一日に何回磨けばよいですか?1日2回で十分です。朝と就寝前がポイントです。特に就寝前の歯みがきが重要で、眠っているあいだは唾液の分泌が減り、細菌がより活発になるためです。食事のたびに磨く必要はありません。
食後すぐに磨くべきですか?一般的には問題ありませんが、酸性の食べ物・飲み物(炭酸飲料、かんきつ類、ワイン)の直後は30分待ってから磨くのが良いです。酸でエナメル質が一時的に弱くなっている状態で直ちに磨くと、エナメル質がより削れてしまいます。
電動歯ブラシのほうが良いですか?電動歯ブラシは一定の動きを自動で行うため、手技に自信がない方には役立ちます。ただし、通常の歯ブラシでも上の4つを守れば十分です。電動でも手用でも、磨き残しなく磨くことが肝心です.
当院の事例を2つ
40代前半の男性患者さま。1日3回磨いているのに、奥歯の内側にプラークがたまり続けるケースでした。観察すると、いつも同じ部位(奥歯の内側)を抜かしていました。一定の順序で磨く習慣をつけていただくようご案内したところ、その部位のプラークが明らかに減りました。 問題は回数ではなく、磨き残している部位でした。
50代前半の女性患者さま。硬い歯ブラシで強く磨く方で、歯ぐきの退縮と歯がしみる症状が進行していました。やわらかい歯ブラシに替え、やさしく磨いていただくようご案内したところ、しみる症状が軽減し、歯ぐきの退縮も止まりました。 強く磨くことが、よく磨けているということではありませんでした。
患者さまにぜひ覚えておいてほしい5つ
- どの歯みがき法が最良かという明確な根拠はありません。方法そのものより、磨き残しなくまんべんなく磨くことのほうがずっと重要です。
- 1回の歯みがきで除去できるプラークは平均で42%にとどまります。毎回同じ部位を抜かしてしまうと、その部位にプラークがたまり続けます。
- 本当に大事なのは4つ: 磨き残しなく、2分、やわらかい歯ブラシ、歯ぐきとの境目に対して45度です。複雑なテクニックを覚えるよりも、この4つに集中してください。
- 1日2回で十分です。就寝前の歯みがきが特に重要で、食事のたびに磨く必要はありません。
- 歯みがきは歯の清掃の半分です。歯ブラシの毛先が届かない歯と歯の間は、デンタルフロス・歯間ブラシで毎日清掃しましょう。
ソウルBD歯科 ムン・ソクジュン(文錫俊)院長です。患者さまには、複雑な磨き方を無理に覚えるのではなく、磨き残しなく2分間やさしく磨くことに集中していただきたいと思い、この記事を書きました。歯みがきは、難しくするのではなく、漏れなく行うことが大切です。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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PLOS One DOI: 10.1371/journal.pone.0306302
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2
International Journal of Dental Hygiene DOI: 10.1111/idh.12840