クラウンの寿命はどのくらいで、いつ作り直すべきでしょうか

クラウンは一生もちますか — 作り直しを検討すべき6つのサイン
50代前半の患者さまが、古くなったクラウンを心配して来院されました。15年前に被せた奥歯で、最近その周りに食べ物がよく挟まり、においがするとおっしゃいます。「クラウンは人工物だから一生もつんじゃないの?これはどうしてですか?」私はこうお答えしました。「クラウン自体は問題ないこともあります。ですが、その下、クラウンと歯ぐきが接する境目でトラブルが起きている可能性があります。」
前回はクラウンを被せた歯が痛む理由を取り上げました。今回はその次の疑問、「ではこのクラウンはどのくらい使えて、いつ作り直すべきか」です。覚えていただきたいのは三つです。第一にクラウンの平均寿命。第二に何がその寿命を左右するのか。第三に、作り直しが必要なサインをどう見極めるか、です。
まず用語を整理します。
クラウンの寿命: 被せたクラウンに手を加えることなく機能を保てている期間。材料・お手入れ・咬む力によって異なり、一生続くわけではありません。
クラウンは平均どのくらいもちますか?
まずご安心ください。クラウンはかなり長くもつ治療です。
複数の研究を総合すると、単独のクラウンの5年生存率は材料によって概ね94~96%と高い水準です。ただし、ガラス系セラミックのように脆い材料ではそれより低く、強い力がかかる奥歯では生存率がさらに下がります 1. 最近のデータでも、メタルボンドや硬いセラミッククラウンの5年生存率は97~98%に達します。
ここで正直にお伝えしておきたい点があります。5年、10年までは生存率が高くても、20年ほど経つとその割合が60%台まで下がることもあります。つまり、クラウンは長くもつ治療ではありますが、一生を保証する治療ではありません。ですから「いつかは作り直すこともある」と初めから知っておくと、いざという時の落胆が少なくなります。

クラウンは人工物だから、むし歯にはならないのではありませんか?
ここでよくある思い込みを正します。「クラウンは人工物だからむし歯にもならず一生もつ」— 半分も正しくありません。
クラウン自体はセラミックや金属なので確かに腐食やむし歯にはなりません。しかしクラウンが覆っているのはあくまで天然の歯です。そしてクラウンと歯ぐきが接する縁、その下には天然歯が露出しています。この境目に食べかすや細菌がたまると、クラウンの下の天然歯にむし歯ができます。これがクラウンを作り直す最も一般的な理由の一つです。
クラウンが長持ちするかどうかを最も強く左右するのは、材料そのものではなく、クラウンと歯ぐきの境目をどれだけ清潔に保てるかです。だからこそ、クラウン装着後は境目の歯みがきとフロスがより重要になります。
クラウンを長持ちさせるための習慣7つ
寿命を延ばすために、ご自身でできることをまとめました。
- クラウンの縁(歯ぐきとの境目)を意識して磨きましょう— むし歯ができやすいまさにその場所です。
- デンタルフロスや歯間ブラシで境目を清掃しましょう— 歯ブラシが届かない隙間をケアします。
- 歯ぎしりがある方はナイトガード(歯ぎしり装置)を使いましょう— 繰り返し強い力がかかると、クラウンが割れたり緩んだりします。
- 氷やペンなど硬い物を噛む癖はやめましょう— セラミックが割れることがあります。
- 定期検診で境目の状態とレントゲンを確認しましょう— 下で進むむし歯は見た目では分かりにくいものです。
- しみる、食べ物が挟まり始めたら放置しないでください— 早期に確認すれば、クラウンを生かせる場合があります。
- 歯ぐきのケアも併せて行いましょう— 歯ぐきが下がるとクラウンの境目が露出します。
こんなサインがあれば作り直しが必要なことがあります
次のサインがあれば、歯科での確認をおすすめします。
- クラウンの境目に黒い線が見える、食べ物がよく詰まってにおう— 土台のむし歯を疑います。
- クラウンがぐらつく、もしくは丸ごと外れました。— 接着が弱くなっている状態です.
- セラミック部分が欠けたり、歯が欠けたような欠損が生じました。— 程度により修理や作り直しが必要です。
- 噛むと痛む、あるいは新たにしみるようになりました。— 土台の歯や神経の問題の可能性があります。
- 歯ぐきが下がり、金属の縁や境目が見えてきました。— 審美面やメンテナンス上の問題が考えられるため、相談が必要です。
- クラウンの周囲の歯ぐきが腫れて出血します。— 境目周辺の炎症サインです。
クラウンが外れました — 付け直せばよいですか? それとも作り直すべきでしょうか?
クラウンが外れたり不具合が起きたからといって、必ず新しく作るわけではありません。状況によって異なります。
| 状況別の対応(天然歯は?) | ||
| クラウンがそのまま丸ごと外れた(接着の弱化) | 状態が良ければ再装着できることがあります。 | 土台の歯に問題がなければ、多くはそのままで大丈夫です。 |
| クラウンの下にむし歯ができた | クラウンを外してむし歯を治した後、作り直します。 | むし歯の範囲によって異なります。 |
| セラミックの一部が欠けた | 程度により修理または作り直し。 | 多くはそのままです。 |
| 土台の歯にヒビが入った、あるいは神経が死んだ | 神経治療(根管治療)と作り直し、場合によっては抜歯。 | 損傷の程度によって異なります。 |
ですので、クラウンが丸ごと外れたときは捨てずにお持ちください。誤って飲み込まないよう保管し、土台の歯が無事ならそのまま再装着できる場合があります。
高い治療をしたのにもうやり直しかと、ご自分を責めないでください。
古いクラウンをやり直したほうがよいと言われると、「大金をかけたのにもう?」、「自分のケアが悪かったせいだ」と落ち込まれる方が少なくありません。そこまで気に病む必要はありません。
クラウンは一度入れたら一生ものというより、車のタイヤのように寿命があり維持管理が必要なものに近いです。長く使えたのなら、むしろ十分に役目を果たしたということです。もちろん境目のケアを丁寧にすれば寿命は伸ばせますから、自責よりも今からのメンテナンスに集中しましょう。作り直しは失敗ではなく、整備です。
当院の診療室での症例を2例ご紹介します。
50代前半の男性患者さま。15年経ったクラウンの境目に食べ物が詰まり、臭いがすると来院されました。確認の結果、クラウンの下の天然歯にむし歯がありました。クラウンを外してむし歯を治療した後、新しく作り直しました。 クラウンの下はあくまで天然歯です。その境目のケアが寿命を左右します。
40代後半の女性患者さま。ある日クラウンが丸ごと外れて驚いて来院されました。幸い、クラウンも土台の歯も状態が良く、新しく作らずに再装着できました。 外れたからといって必ず新調するわけではありません。外れたクラウンを持参してくださったことが助けになりました。
患者さまにぜひ覚えておいてほしい5つのポイント
- クラウンは長持ちしますが、一生ものではありません。5年の生存率は高いものの、年月とともに徐々に低下します。
- クラウン自体は虫歯にはなりませんが、その下の天然歯はむし歯になります。境目のむし歯が、再治療のよくある理由です。
- 境目のブラッシングとデンタルフロスが寿命を左右します。被せた後のケアのほうが大切です。
- 境目の黒い線・食べ物の挟まり・におい・ぐらつきは、再診のサインです.先延ばしにしないでください。
- クラウンが外れたら、必ずお持ちください。土台の歯が問題なければ、再装着できます。
ソウルBD歯科のムン・ソクジュン(文錫俊)院長です。クラウンを「一度やれば終わり」と考えて落ち込まれる方が多いのですが、きちんとケアすれば寿命は延びますし、やり直しは失敗ではなくメンテナンスだということをお伝えしたかったのです。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
-
1
18(Suppl 3):73–85 DOI: 10.1111/j.1600-0501.2007.01467.x