口臭の本当の原因は、胃ではなく舌と歯ぐきです

口臭の85%は口の中が発生源です。胃のせいではありません
先週、診療室に40代後半の患者さまが定期検診でいらっしゃいました。「院長先生、私、胃が悪いせいか口臭が消えないんです。歯みがきは本当に頑張っているのですが。」と、少し恥ずかしそうにお話しくださいました。検査の結果、原因は胃ではなく、舌の奥の舌苔と軽い歯周病でした。いちばん驚かれていたのはこのひと言です。「胃のせいではないんですか?」結論から申し上げると、口臭の約85%は胃ではなく口の中が発生源です。診療中によくお見かけする「自分のせいだ」と思い込まれるパターンです.
本稿の結論を先にお伝えします。第一に、口臭の本当の原因は皆さまが思っているものと異なる可能性が高いです。第二に、口臭の原因の第1位は舌苔で、次が歯周病です。第三に、ご自宅でご自身で口臭を減らす方法があります.
口臭(halitosis、口臭):他の人が不快に感じる程度のにおいが口から持続的に出ている状態。食べ物由来の一時的なにおいとは異なり、毎日のように繰り返す、あるいは起床時にとくに強く出るのが特徴です.
口臭は胃からではないのですか?
よくいただくご質問ですので、結論からお答えします.
データでお示しします。口臭の原因を分析した系統的レビューでは 80~90%の口臭が口腔内由来であると報告されています 1。胃・肝・腎・呼吸器など体内の問題による口臭は全体の10~15%にすぎません.
ベルギーで口臭を主訴に受診した2,000名の患者を分析した研究では、さらに具体的です 2.
- 舌苔: 43%
- 歯周病: 11%
- 舌苔 + 歯周病の併存: 18%
- その他の口腔内原因: 4%
- 口腔外の原因(胃・呼吸器など):約9%
つまり、**舌苔単独が最大の原因であり、この二つを合わせると口腔内原因が76%**となります。もし胃のせいだと思っておられたなら、見立てが外れていた可能性が高いです.
ここで、よくある誤解を正しておきます。「口臭は胃が悪いから起こる」という説は、半分も当てはまりません。メディアや一般的な常識では胃の原因が強調されがちですが、臨床データはそう示していません. 胃で生じたガスが食道を逆流して口まで上がってくることは、きわめてまれです.食道と胃の間には括約筋があり、ガスが上へ漏れにくいからです.
一文でまとめると、こうです。 口臭がなかなか消えないとき、まず見直すべきは胃ではなく舌の奥と歯ぐきです.

ところで、なぜ舌苔が口臭原因の第1位なのでしょうか?
この点は、皆さまがいちばん興味をお持ちになるところでしょう.
舌、とくに舌の奥3分の1は表面が非常に粗く、細かな溝が多くあります。そこに食べかす・剝がれた細胞・細菌がたまり、白や黄ばみの膜のように積もったものが舌苔です。その中の細菌がタンパク質を分解する過程で、**揮発性硫黄化合物(VSC)**というガスが産生されます。硫黄に似たにおいで、よく「腐った卵」や「キャベツ」のにおいと表現されるのがこのVSCです。これこそが口臭の真犯人です.
歯周病でも同じ種類のガスが作られます。歯ぐきと歯の間の深いポケット(歯周ポケット)に、同じタイプの嫌気性菌が増えるためです。歯周病と口臭が併発しやすい理由がここにあります.
もう一つ付け加えます。 口臭の強さを左右するのは、何を食べたかではなく、舌の奥にどれだけ舌苔が溜まっているか、そして歯ぐきの周りに深いポケットがあるかどうかです.
口臭の原因7つ、データで整理すると
| 原因/全体の口臭に占める割合/ご自身でコントロール可能か | ||
| 舌苔 | 約43% | 毎日の舌清掃でコントロール可能 |
| 舌苔+歯周病の併発 | 約18% | 毎日のケア+診療室での治療 |
| 歯周病のみ | 約11% | 診療室での治療と毎日のケア |
| 口腔の乾燥(唾液不足) | 約5% | 水分摂取や薬の調整で一部コントロールできます |
| むし歯(特に深いむし歯) | 約4% | 診療室での治療でコントロール可能 |
| 胃・呼吸器など体内の原因 | 約9% | 内科受診 |
| その他(喫煙・断食・ホルモンなど) | 残り | 一部コントロール可能 |
この表が患者さまにお伝えしたい要点は2つです。第一に、口臭の約70%は舌と歯ぐきに関連しています。まず最初に確認すべき場所がはっきりします。第二に、 胃の原因は約9%で、患者さまが最も疑われるその原因が、実際には最も少ないのです。胃薬を飲む前に、まず舌の清掃と歯ぐきのチェックをするのが順序です。
ご自身の口臭、どうやって確かめますか?
当院で患者さまにご案内している自己チェック法です。
- 手首なめテスト: 手首の内側を舌で軽くなめ、10秒待ってからにおいを嗅いでください。そのにおいが患者さまの口臭の一部です。
- スプーン舌苔テスト: 清潔なスプーンの背で舌の奥をやさしくこすり、付着したものを確認してください。黄色っぽい膜が多く付くようなら、舌苔が口臭の原因である可能性が高いです。
- デンタルフロスのにおいテスト: デンタルフロスを使った後、そのフロスのにおいを嗅いでみてください。歯ぐきの間から嫌なにおいがする場合、歯周病の可能性があります.
- 朝の口臭の強さ: 起床時は誰にでも一定の口臭がありますが、歯みがき後1〜2時間経ってもまた強く戻ってくるなら、口腔内に原因がある可能性が高いです。
この自己チェック法は、ご自身で口臭の強さをおおよそ把握する助けになりますが、正確な診断は診療室でお受けください。 ご本人は自分の口臭に慣れてしまって、正しく嗅ぎ分けられないことが多いのです。
口臭を減らす7つの行動
当院が患者さまにおすすめする要点です。
- 舌清掃 毎日1回— 舌クリーナーまたはやわらかい歯ブラシで、舌の奥から手前へやさしくこすり落としてください。あまり奥まで入れるとえずいてしまうので、無理のない範囲で。
- デンタルフロスまたは歯間ブラシ 毎日1回— 歯と歯の間の食べかすや細菌の膜を除去しないと、口臭の原因がそのまま残ります。
- 水分を十分に摂る— 口内が乾くと細菌が増えやすくなります。1日1.5~2リットルの水をこまめに飲むことをおすすめします.
- 無糖ガムまたはキシリトール— 唾液の分泌を促し、口内を洗い流す効果があります.
- 禁煙と飲酒を控える— どちらも口内を乾燥させ、細菌の膜(プラーク)を増やします.
- カフェイン・辛い食べ物を控える— 即効性は高くありませんが、慢性的な口腔乾燥がある方には役立ちます.
- 定期的なスケーリングと歯ぐきのチェック— ご自宅のケアでは届かない部位が、口臭の原因になっていることがあります.
ただし、この点はご安心ください。ご自身を「歯みがきが下手だから口臭が消えない」と責める必要はありません。歯みがきが十分でも、舌の清掃と歯間の清掃が抜けていると口臭は改善しません。 歯みがきだけで届く部位と、口臭の原因となる部位は異なります.
口臭対策のマウスウォッシュ、効果はありますか?
当院で患者さまから最もよくいただくご質問です.
| マウスウォッシュ 種類 効果 限界 | ||
| 市販の一般的なマウスウォッシュ(香料中心) | 30分~1時間の一時的なマスキング | 原因除去の効果は弱い |
| クロルヘキシジン配合マウスウォッシュ | 細菌の減少効果が大きい | 長期使用で歯の変色、処方が必要 |
| 亜鉛配合マウスウォッシュ | 揮発性硫黄化合物を直接中和 | 処方または薬局で購入 |
| 二酸化塩素配合マウスウォッシュ | 口臭分子を酸化させて中和 | 一部の製品のみ効果が検証済み |
マウスウォッシュは補助的な手段として効果はありますが、 マウスウォッシュだけでは舌苔や歯周病は治まりません.マウスウォッシュの香りで一時的に口臭を隠しても、1~2時間後にはまた出てきます。マウスウォッシュで口臭を何とかしようとすると、より高価な製品を探し回った末に、結局は受診されます。順番を変えるのが正解です.
当院の症例を二つ
40代後半の男性患者さま。5年以上、胃のせいで口臭がすると考えて胃薬を飲み続けていたとのことです。検査の結果、原因は胃ではなく舌の奥の舌苔が最も大きく、歯周病の初期段階も併発していました。舌清掃を毎日1回、スケーリング、歯間ブラシの使用をご案内し、1か月後にはご本人が「口の中が軽くなった」とおっしゃいました。 胃薬は必要ありませんでした.
60代後半の女性患者さま。ご家族から口臭を指摘されて来院されました。患者さまは歯みがき後に毎回マウスウォッシュまでしていたとのこと。検査の結果、歯周病がステージ2の初期歯周炎まで進行し、歯ぐきの深いポケットから不快なにおいがしていました。ルートプレーニング後、1か月で口臭ははっきりと減少しました. 歯周病を治さずにマウスウォッシュだけで口臭を隠すのには限界があります.
患者さまにぜひ覚えておいてほしい5つのポイント
- 口臭の80~90%は口の中が発生源です.胃が原因の可能性は約9%と最も少ないです.
- **舌苔が第1位の原因(43%)、歯周病が第2位(11%)**です。2つを合わせると全体の約70%になります.
- 自分の口臭は自分では感じ取りにくいものです.手首をなめる・スプーンで舌苔・デンタルフロスのにおいテストで自己チェックしてみてください.
- 舌の清掃と歯間の清掃を毎日プラスしていただくと、ほとんどの口臭は軽減します。歯みがきだけでは届かない部位こそが本当の原因です。
- マウスウォッシュは補助的な手段です。原因に対処せずにマウスウォッシュだけで覆い隠しても、効果は一時的にとどまり、またぶり返します。
ソウルBD歯科のムン・ソクジュン(文錫俊)院長です。患者さまが胃薬を飲まれる前に、鏡の前で舌の奥を一度確認していただければという思いで書きました。口臭の本当の原因は、皆さまがお考えになるよりも、身近なところにある可能性が高いです.
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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1
Oral Diseases DOI: 10.1111/odi.14172
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2
International Journal of Oral Science DOI: 10.1038/ijos.2012.39