骨が足りないと言われましたが、インプラントはできますか?成功率と治療期間

骨移植(GBR)併用インプラントの成功率は、通常のインプラントとほぼ同じです
先週、診療室で50代後半の患者さまにお会いしました。ほかの病院で「骨がとても不足しているのでインプラントはできない」と言われ、ほとんど諦めかけていたとのことでした。CTを撮り直してお伝えしました。「骨移植(GBR)を併用すれば可能です。」そのとき患者さまが最初に聞かれたのがこれです。「それをするとインプラントの成功率は下がりませんか?」結論から申し上げると、そうではありません。診療室でよくいただくご質問です。
この文章で必ず覚えていただきたい点を先に書きます。第一に、骨移植(GBR)併用インプラントの成功率は通常のインプラントとほぼ同じです。第二に、とはいえ時間と費用はよりかかります。これが本当のトレードオフです。第三に、どのような方に骨移植が必要で、どのような方には不要か、その見極めの基準です。
骨移植(GBR)併用インプラント: インプラント(人工歯根)を埋入する部位の骨が不足している場合に、人工骨または患者さまご自身の骨でその部位を補い、インプラントが定着できる土台を作る処置。インプラントと同時に行う場合と、事前に別段階で行う場合があります。
なぜ骨移植(GBR)が必要なのですか?私の骨が足りないとはどういう意味ですか?
よく頂くご質問なので、結論からお伝えします。
歯を抜いてそのまま長く空けておくと、その部位の歯槽骨は次第に痩せていきます。歯根は歯槽骨に刺激を与えていますが、その刺激がなくなると、身体は「この骨はもう使わない」と判断して吸収してしまいます。通常、抜歯後の最初の1年に骨の体積は最も減り、その後もゆっくりと減少が続きます。
インプラントは骨に植立して安定する構造です。骨の厚みと高さが十分であってこそ、インプラントはぐらつかずにしっかり定着します。骨が不足している場合の選択肢は2つです。より短く細いインプラントを使う(適応できる症例は限られます)か、不足分だけ骨を補って通常サイズのインプラントを埋入するかです。後者が骨移植(GBR)併用インプラントです。
ここでよくある誤解を一つ。『骨移植は大きな手術だから無条件に避けるべき』という考えは、半分だけ正しいです。大きな骨移植(ブロック骨移植、垂直的増生)は確かに負担の大きい処置です。しかし、ほとんどの骨移植はインプラント埋入と同時に行う 少量の歯槽骨補填であり、追加の痛みや腫れが数日ほど長く続く程度です。

骨移植(GBR)併用インプラントの成功率、本当に下がらないのですか?
これが本稿で最も大切にしていただきたいポイントです。
イスラエルのマカビ・ヘルスサービスの全国データでは、2014年から2022年までに埋入されたインプラント 158,824個のうち、骨移植(GBR)と同時に埋入されたものが 45,715個でした。これらのインプラントの**臨床成功率は 97.83%**で、これは通常のインプラント群と統計的に同等の水準でした 1.
この研究が患者さまにとって重要な理由は2つです。第一に、サンプルが4万5千個という点です。小さな臨床試験ではなく、一国のほぼすべてのインプラントデータを見た結果です。第二に、同じ研究で 失敗の70%が最初の1年以内に起こると報告しています。つまり、インプラントの最初の1年を問題なく乗り切れば、その後は安定しやすいということです。
一言でまとめると、こうなります。 骨移植(GBR)併用インプラントの成功率は、通常のインプラントとほぼ同じです。ただし最初の1年が最も重要で、その時期の喫煙やケア不足が結果を分けます。
では、通常のインプラントと何が違うのでしょうか?
成功率は同じでも、患者さまのご負担は異なります。本当のトレードオフはここにあります。
| 比較項目 通常のインプラント 骨移植(GBR)併用インプラント | ||
| 手術時間 | 30~60分 | 60~120分 |
| 痛み・腫れ | 平均的 | 数日〜1週間ほど長い |
| 日常生活への復帰 | 2~4日 | 5~10日 |
| 補綴(歯)が入るまでの総期間 | 3~6ヶ月 | 6~9ヶ月(少量の同時移植)〜9~12ヶ月(別段階での移植) |
| 費用 | 標準 | 骨移植の材料費・追加の処置費用が発生します。 |
| 成功率 | 約 97~98% | 約 97~98% |
骨移植を伴うインプラントの本当のトレードオフは 時間と 費用であって、結果の質ではありません。6か月ほど余分にお待ちいただけて、追加費用をご負担いただけるなら、結果は通常のインプラントと同等にしっかりお使いいただけます。
骨移植を伴うインプラントの結果を左右する6つの要因
同様の研究やほかの大規模研究を総合すると、骨移植を伴うインプラントの成功率を左右する要因は次のとおりです.
- 喫煙— もっとも影響が大きいです。一酸化炭素が新しい骨の定着と歯ぐきの回復を妨げます。喫煙される方のインプラント失敗リスクは、非喫煙者より明らかに高くなります。
- 最初の1年間の管理— インプラント失敗の約70%は最初の1年に起こります。定期検診にお越しにならないと、最もリスクが高い時期を逃してしまいます。
- 手術部位— 上顎(とくに奥歯部位)は下顎より失敗率が約2倍です。骨の密度が低いためです。
- 抜歯と同時のインプラント埋入の有無— 抜歯と同時にインプラントを埋入すると、待ってから埋入する場合より失敗率が約1.5倍高くなります(3.08% vs 2.07%)。早い結果を望まれる場合はトレードオフがあります。
- コントロール不良の糖尿病・基礎疾患— 新しい骨の定着速度が遅くなります。
- 少量の骨移植 vs 大きな骨移植— 同じ部位に少量を補う程度なら、追加の負担はほとんどありません。ブロック骨移植や大きな体積の垂直的増大は、負担の大きい別個の手術になります。
ここで一つ、はっきり安心していただきたいことがあります。患者さまが「歯を抜くのが遅れたから、自分が骨を失って骨移植まで必要になったのでは」とご自分を責める必要はありません。抜歯後に骨が減るのは体の自然な反応で、患者さまが防げることではありません。今できるのは、上の6項目のうち患者さまが直接コントロールできること(喫煙、定期検診、血糖管理)に集中することです。
同時骨移植 vs 段階的骨移植、何が違うのでしょうか?
当院の診療室で患者さまによくご説明するポイントです。
同時骨移植: インプラント埋入と同じ日に、不足する骨を補います。不足量が少ない場合(通常はインプラントの横の小さな隙間程度)に可能です。追加時間は約30分、回復期間はインプラントのみの場合と大きな違いはありません。最も一般的な形です。
別段階の骨移植: 骨移植のみを先に行い、4~6か月の回復後に、新しく定着した骨にインプラントを埋入します。不足量が多い場合(ブロック骨移植、大きな体積の垂直・水平的増大)、またはサイナスリフト(上顎洞挙上術)の一部ケースで行います。総治療期間は9~12か月と長くなり、手術は2回になります。
CT画像で不足量は明確に分かります。同時で可能か、別段階にすべきかは、診療室で画像を一緒に確認しながら患者さまとご相談のうえ決める事項であり、検索であらかじめ決めておくものではありません。
当院の診療室の症例を2例
40代後半の女性患者さま。奥歯を抜歯してから6か月ほど経ってインプラント相談に来院。歯ぐきの骨の厚みがインプラント径より約2mm不足していました。同時骨移植で対応。チェアタイム約70分。痛み・腫れは通常のインプラントより2~3日ほど長く、6か月後に補綴まで完了しました。
60代前半の男性患者さま。上の奥歯部に骨がほとんどなく、サイナスリフト(上顎洞挙上術)が必要でした。別段階でまず骨移植、6か月の回復後にインプラント埋入。総治療期間は約10か月。患者さまは「時間がかかっても、終わってみればやってよかった」とおっしゃいました。 時間がかかるからといって、結果が悪くなるわけではありません。
患者さまにぜひ覚えておいてほしい5つのポイント
- 骨移植を伴うインプラントの成功率は約97~98%で、通常のインプラントとほぼ同じです。158,824件のデータで確認された数値です。
- 本当のトレードオフは、結果の質ではなく時間と費用です。補綴まで6カ月から12カ月程度が一般的です。
- インプラントの失敗の70%は最初の1年に起こります。その時期の喫煙やケアの怠りが、結果を最も大きく左右します.
- 少量の同時の骨移植(GBR)と、大きなボリュームで段階的に別途行う骨移植では、負担が異なります。インターネット検索で先に怖がらず、診療室でCT画像を確認してください。
- 抜歯後に骨が痩せていくのは、患者さまのせいではありません。今できるのは、最初の1年の管理に集中することです。
ソウルBD歯科 院長、ムン・ソクジュン(文錫俊)です。患者さまが「骨が不足していてインプラントはできない」という一言で諦めてしまわれないように、という思いで書きました。
参考文献
この記事の医学的主張は以下の論文に基づいています。DOIをクリックすると原文に移動します。
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Journal of Functional Biomaterials DOI: 10.3390/jfb17010046